ここは「voidbox」と名付けた、ひとつの箱です。
最初は、特別な目的があったわけではありませんでした。
なにかを伝えたいとか、発信したいとか、
そういう意欲から始まった場所ではなかった。
ただ、ふとしたときに浮かんでしまう考えごとや、
気持ちのかたちになりきらない違和感のようなものを、
どこかにそっと置いておきたい、と思ったのがきっかけでした。
頭の中をぐるぐると回っているもの。
話すには重すぎるけど、黙っているにはしんどいもの。
すぐに忘れてしまいそうな違和感や、小さな気づき。
それらを、ひとまずここに置いてみる。
それだけのことです。
voidbox という名前には、いくつかの意味を重ねています。
void=空白。
box=箱。
つまりここは、空白を入れておく箱。
何もないようでいて、
実はたくさんの余白や、記憶や、沈黙や、
名前のない感情が詰まっている場所。
誰にも見られなくてもいい。
でも、誰かにそっと覗かれても、かまわない。
そんな、開かれているようで閉じている、
どちらともつかない場所がほしかった。
この箱に入っているものは、いくつかの種類に分かれています。
たとえば「残響室」は、過去の記憶に残った言葉を聴きなおす場所。
「日常の輪郭」は、日々のなかでふと立ち上がる感情や気配を記録する場所。
「拾いもの」は、本や人のことばから始まる思考のかけら。
どれも、“はっきり言い切れないこと”ばかりです。
でも、それを無理に整えることなく、
そのままの温度で残しておけるような場所をつくりたかった。
ここは、そういう箱です。
何か立派なことを書くつもりはありません。
むしろ、誰にでもあるような揺れや、
まとまりきらない思考を、そのまま置いていきたい。
書いている人間には名前がありません。
でも、void という小さな名前を借りて、
この空白の箱をゆっくりと満たしていくつもりです。
誰かの役に立つ情報は、あるかどうかわかりません。
ただ、読んでくれた人の中に、
「ああ、わかるかも」とふっと何かが触れる瞬間があれば、
それだけでじゅうぶんです。
何かをうまく言えないとき、
あるいは何も言いたくないときにも、
ここはひらいておこうと思っています。
名前のない気持ちに、そっと名前をつけてみたり。
意味のわからないまま、言葉にしてみたり。
それが、思っていたよりも悪くないということを、
思い返して開けたとき、この箱が教えてくれる気がしています。